株式会社ヒューエンス
地域イノベーションとの係わりを求めて(1)
丸山 敏彦(社外取締役) 略歴へ

最近のように地球温暖化の急速な進行に係わる多くの傍証がその懸念を加速させている。今や、地球は閉鎖系空間であって、地域環境は地球環境問題そのものである。そのような中で目指すはエネルギー・食糧・環境のトリレンマ問題を克服する持続可能な循環型社会の構築である。そのため、新しい社会開発の視点から地域産業技術政策を構築し、循環型社会システムと深く係わる地域イノベーション活動もその政策モデルとして重要な位置付けで産学官連携による実践が望ましい。
循環型社会への共通認識は広く定着してきてはいるものの、全国どの地域ともそのあり方、内容等で必ずしも合意形成のもと進められているわけではない。その構築には新しい仕組みづくりと経済的インセンティブが前提となろうが、その経済的な要因と深く係わる技術開発の遅れも合意形成の妨げとなっているのも事実である。それは北海道において地域的社会問題として深刻化している酪農業からの家畜排泄物(バイオマス)に関してその利活用を進める地域リサイクルシステムひとつをとってもその感を強くする。
酪農業は地域の基幹産業として成長を遂げ、これまでに多頭数営農に向け自動化、省力化等の技術導入による経営安定化に努めてきている。その一方で、生産活動に伴い家畜排泄物は増大し、その量(乳・肉牛)は北海道だけで年間2千万トン近くにも達している。そのように農地還元の限度を遙かに越える莫大な量が健全な営農への少なからずの妨げと共に、深刻な地域環境問題を引き起こしている。それは生産システムという枠を越え、営農全体システムで生じた重大な不具合であって、地域における緊急、かつ重要なニーズの裏返しでもある。"システムの不具合"で顕在化したニーズの技術開発が遅れている分野にこそ、地域企業にとってビジネスチャンスがある。それと同時に産学官連携による「地域と産業に根ざしたイノベーション」活動で実践的な役割を担うチャンスでもある。
そのようなビジネスチャンスへの対応として「技術組合せの妙」である「技術のシステムインテグレーション」"技術システム"を技術経営の基本に据いた企業活動を展開しているのが潟qューエンスである。当社は平成11年設立、W汚染された水と空気"を浄化し再び自然に戻す環境浄化システムを提供する企業である。従来の生物処理に代わる物理化学処理の「旋回噴流式オゾン酸化法」をコア技術として、業績も安定的に推移している。その中で、大学との共同研究、人材の確保・育成等による技術開発機能を高める一方で、IPO化も視野に入れた次なるステージへの移行に向け、ISO27001(情報セキュリティ)、ISO9001(品質)及びISO14001(環境)の認証をこの2月に同時に受けると共に、企業コンプライアンス、ガバナンスに係わる内部管理体制の整備にも努めているところである。
北海道にとって農水産業の振興に直接的に係わる循環型地域システムの構築が大きな命題である限り、当社が目指すことはその構築と係わる"技術システム"対応を中心としたビジネスモデルによる事業展開である。一方で、新しい視点からの地域イノベーションの産学官連携活動においてテクノ・プロデューサ的役割を実践すると共に社会的責任企業として成長し、そのファンド市場で評価を受けることである。それが循環型社会の構築による地域イノベーションに貢献していく当社のありたい企業像である。
(次号「ゼロ・エミッション型リサイクルシステムと地域イノベーション(2)」に続く)

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