株式会社ヒューエンス
循環型地域システムのデザインと"技術システム"対応(3)
丸山 敏彦(社外取締役) 略歴へ

地域経済を大きく支えてきた農水産系産業の役割は今後とも変わるものではなく、その活動に伴う排出物を利活用する循環型地域システムが構築されるならば、地域振興面での役割と存在感が一層、増すことになろう。このような地域システムへの有効なアプローチとしては先ずは"技術ありき"を避けながら、地域と産業特性に合わせたシステムのあり方、進め方等からのデザインが必要である。次いで全体システムとして機能させるための"技術システム"(技術のシステムインテグレーション:組み合せの妙)の視点に立って、要素技術の開発・導入等、さらにはその適正なシステム化によって地域システムはその具現化に向けた合意形成が得られよう。その視点から当社のコーディネーションによって現在、検討を進めているのが以下のような循環型地域システムである。

<地域における工場副産物のリサイクル>

(図をクリックすると拡大表示できます。)
北海道の基幹産業である製糖工場では甜菜(ビート)を原料とする砂糖を生産する際にライムケーキと呼ばれる大量の副産物が排出される。それは石灰石(CaCO3)の焼成によって生成するCaO+CO2を製糖プロセスで使用する際に有機系不純物を取り込んで生成する水分約30%のケーキ状CaCO3で、その排出量も年間22万トン余りにも達している。石灰石はわが国唯一の安定供給を受け得るCa系資源であるが、省資源、省エネルギーの面からその特性を生かした利活用も重要である。そのため、本システムではライムケーキのカスケード利用を基本に据え、それに加え同地域内で排出される各種廃棄物のリサイクルとの関連で、"技術システム"対応からその構築を検討しようとするものである。
それら廃棄物とはライムケーキと共に製糖工場から排出される有機汚泥等、酪農業からの家畜排泄物、食品加工場等からの有機廃棄物及び畜産加工場からの肉骨粉等である。本システムの狙いはそれぞれ廃棄物の利用技術を要素として相乗的利活用の連関から新たな価値を生み出していくリサイクルである。その構築の開発ポイントとしてはライムケーキの高次リサイクルに加えて廃棄物処理に供する自前バイオエネルギーを確保しながら、廃棄物中の肥料成分利用による農作物の高品質・高収化に向けた機能性固形肥料の生産、及びその際に生じる汚水の浄化プロセスから構成するゼロ・エミッション型システムである。
そのようなシステム構築には広い分野にわたる数多くの要素技術が必要であるが単なる技術の組合せによる対応ではその"組合せの妙"は発揮されない。これまでに当企業及び関連企業で蓄積してきた技術群のもとで組み上る上述のシステムであっても、その進化を前提とした技術開発・導入を常に考えながら実践していくことが極めて重要である。そのアプローチによって本システムの経済的インセンティブを高めて、はじめてPFI等市場への参入も可能となり、ひいては循環型地域システムづくりも促されることになろう。そのような実践活動においてテクノ・プロデューサ的役割を担う企業として期待されるのが潟qューエンスである。
(次号「循環型地域システムに係わる要素技術群とその応用(4)」に続く)

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