株式会社ヒューエンス
農水産系廃棄物のリサイクルと係わる研究開発の方向付け(5)
丸山 敏彦(社外取締役) 略歴へ

前号(4)において述べた「エネルギー・食・環境」分野で発掘・育成された技術シーズの多くは地域の緊急、かつ重要なニーズである農水産系産業からの排出物リサイクル及び機能性バイオマス利用に関連するものである。それらについて有機系廃棄物リサイクルシステムの中でそれぞれ要素技術として位置付けると、以下のような循環型地域システムに係わる研究開発への一つの方向付けがなされる。

<循環型地域システム研究開発の方向付け>
(T)ゼロエミッション型リサイクルシステム

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(U)機能性バイオマス加工食品利用システム

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上記地域システムにおける要素技術の連関図で示すように、本研究開発の方向付けでは(T)ゼロエミッション型リサイクルシステム及び(U)機能性バイオマス加工食品利用システム構築を目指そうとしている。システム(T)では地域内農水産系廃棄物(Bads)からの高品質バイオガス・機能性固形肥料(Goods)の生産、及びその際に発生する汚水の浄化処理と共に、最終的にはそれらグッズの活用による地域における農作物・機能性バイオマスの高品質・高収量化である。またシステム(U)ではシステム(T)との関連で生産される高品質農作物・機能性バイオマスを活用して新規形態の機能性複合加工食品等、今後における期待の大きい「未病」等市場で体内インフラ改善食品(生活習慣・高齢化対応食品、機能性栄養食品等)への展開を狙いとしている。そのような視点に立った循環型地域システムでは単に環境保全に止まらず、地域振興と深くかかわる「地域と産業に根ざしたイノベーション」の創出を促すことも期待できよう。
本地域システムに関しては上述のような基本的な考え方のもとで、それも技術のシステムインテグレーションによる技術連関(シナジー)効果を期す観点から進めようとするものである。またその際は、従来からの生物処理プロセスに代えて物理・化学的処理を主体とするプロセス群で構成するシステムで処理し、全体システムとして工業的プロセスで対応するのもその技術的特徴の一つである。そのようなシステム構築には広い分野にわたる多くの要素技術が必要であるが、これまでのコーディネート活動による限られた技術シーズで組み上げようとするシステムではおのずと技術の実証的成熟度・数等で制約を受け、その効果的対応において不十分なことは言うまでない。したがって、それら技術シーズ毎の補完的・実証的検討及びその発展性に関する評価等と共に、常にシステム進化を前提とした新たな要素技術開発・導入、その適正なシステム化等のもと、全体システムとして機能させるために組み込んでいく技術群に関して地域特性に合せてデザイン的観点からのアプローチも極めて重要である。
地域において基幹産業である農水産系産業の生産活動と係る循環型社会は"待ったなし"の中でその構築に関して遅々として進まない合意形成は有機系廃棄物リサイクル関連の技術レベルから持たらされる経済的インセンティブの低さにも起因している。そのような技術開発の遅れている分野にこそ、ビジネスチャンスがあり、地域企業にとってこれまでの"もの"づくりに加えて"こと"づくりへと視点を代えながら競争力をつけていくチャンスでもある。それを促すためにも循環型地域システムの構築を地域産業技術政策の中で一つの技術政策モデルとして位置付けて、産学官連携で実践する政策的支援が極めて重要である。そのような視点からの政策支援活動は地域産業のビジネスチャンスに結び付けると共に、地域振興と深くかかわるイノベーションの創出も促すうえでもその意義は大きい。その中で(株)ヒューエンスは中核的企業の一つとなって、自社の企業価値化活動を進めるためにもその一翼を担っていきたい。
(次号「旋回噴流式高速攪拌技術(新しい単位操作)の環境・食・エネルギー分野への展開(6)」に続く)

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