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ソーシャルディスタンス

 
ほとんどの広葉樹が長い眠りにつく頃、カラマツの黄金色の針葉が風に舞い始めます。あれほどにぎやかだった森はモノトーンの世界へと変わり、雲が垂れ込めた日には、いっそう寒々しさが漂います。
 十勝川のいつもの場所へやってきましたが、カモもハクチョウたちの姿も見えません。今年は強い寒波が到来していないので、オオワシやオジロワシもまだ渡ってきてはいないだろうと予想はしていましたが、この異様なまでの静けさの一端は、もしかしたらこの秋の海の異変に関係しているのかもしれません。今年は遡上するサケもほとんどいないのでしょうか。
 河畔林の細い道をがたがたと抜けて、広い河川敷の道路へ上がりました。川に沿って大きくカーブしながら国道へ出る手前、木の枝にエゾリスがじっと座っていました。木の肌と同じような灰色をしていますが、目線の高さにあったその丸い影はとても目立ちます。ドングリをかじっているわけでもなく、ただじっと体を丸くしているので、車を止めて窓から写真を一枚。一瞬、警戒する姿勢を取りますが、それはすぐに好奇心に変わったように見えました。すっかり冬毛になったふさふさの耳を、ピンとこちらへ向けています。きっと、車のドアをガチャと開けた途端に、この均衡は破られて、相手は高い木の上へと逃げてしまうことでしょう。そう分かっていたので、車の中から静かに目を合わせます。人間がこの薄い鉄の箱に入っている分には、彼らのソーシャルディスタンスをむやみに脅かさずに済むことが多いのです。
 それにしても、どうしてこんなところでまるくなっているんだろうなぁ~。太陽も出ていないので、日向ぼっこというわけでもないでしょう。わずか数メートル先でも、言葉を交わすことができない相手の気持ちを推し量るのは簡単ではありません。でも、その不思議さの中に面白さが詰まっています。
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