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風をつかまえて

 この日もタンチョウのサンクチュアリーには、早朝の音羽橋から梯子して来ているのであろうアマチュアカメラマンたちが何人もいました。皆、ずっしりとした三脚に、これまた重たそうな望遠レンズを装着したカメラを並べています。それでも、こんなご時世ですから、以前に比べるとずっとまばらで、昼ご飯を済ませてから到着したのんびり者にも、十分な場所が残っていました。
 純白と漆黒、そして紅をまとった紳士淑女たちが、首をすっと伸ばし、ゆったりとしたテンポで白銀の大地を歩く姿には、独特の優雅さがあり、見ているだけでこちらの背筋も伸びるような気持になります。冷えた空気も、今はこの神聖な景色の引き立て役になっています。どこからともなく大きな鳴き声が聞こえてきました。西の空からタンチョウが8羽、飛んできます。着地するのかと思いましたが、彼らは広い餌場の丘を低空のまま通り過ぎ、やや東に向きを変えて私たちの正面の空で二つのグループに分かれ、ひとグループが旋回を始めました。白い羽をきらり、きらりと光らせながら、あっという間に高い高い空へと昇っていきます。最後には彼らの姿は見えなくなり、かすかに聞こえていた鳴き合う声も消えました。
 仕事初めの今日は、低気圧の影響で強い風が吹いています。青空は、巻き上げられた雪と土の色でかすんでいます。いつもの橋を渡るとき、オジロワシが飛んでいるのが見えました。この強風の中を旋回しています。鳥たちが高い空を舞っているのを見るとき、いつも、あそこには何があるのだろう、どうしてあんなに高いところまで昇っていくのだろうと考えてしまいますが、もしかしたら理由はないかもしれません。なんだか、ただ風を楽しんでいるようにも見えるからです。
 風がなければ、高い空へ舞うことはできません。高い空へ昇れば、一気に遠くへ飛ぶこともできるそうです。向かい風を、逆境と思うか、それとも必要な力だと思うかは、大きな分かれ目かもしれません。同じ風を受けるなら、やはり後者でありたいと思うのです。そうすれば、大空からの景色も手に入れられるのですから。
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