太平洋を背景にして一気に高度を上げると、山側の視界が開けました。誰もが「おお〜」と感嘆の声をあげ、「最高の眺めですね」と声を掛け合います。続く稜線の奥には、北海道の背骨、日高山脈が、白い浮島のように視界の端から端まで連なっていました。 　８合目より上は、雪が多く残っていました。春先、雪解け水が流れ出ていくため雪渓の下には空洞、つまり天然の落とし穴が空いていることがあります。一歩一歩緊張しながら進みますが、片足に体重が乗るまではその下が空洞になっているかどうかわ分かりませんし、足を置いた次の瞬間にはすっぽりと腰の辺りまで雪に埋まっている始末ですから、無駄な緊張を続けているということになります。 　いい大人が落とし穴に何度もはまって、怖いやら恥ずかしいやら可笑しいやら、複雑な気持ちで、這い出ようともがいていると、その先に広がる清々しい景色がまた目に入りました。まぁ、こんな風に足を止めるのも悪くないかもしれない。心の凝りもほぐしてくれるような、本当に気持ちのよい春の空でした。

2019年04月15日

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