川の姿
幼少期、憧れていたものがありました。それは、コンクリートで護岸されていない川です。豊かな緑に囲まれた場所でしたが、稲作が盛んな地域でもあり、ほとんどの川は河床も側面も護岸され、同じくコンクリートで作られた用水路で、各々の水田に水が運ばれていました。おたまじゃくしやカワニナを見ることはありましたが、魚の姿はほとんどなく、子ども心にも物足りなさを感じていました。
北海道に暮らし始めて感動したことの中に、何といっても川がきれいなことがあります。側面を護岸している川もありますが、川底にはごろごろとした石が残され、時折、小魚がきらきらと光りながら泳いでいるのが見えます。網を使って石の下をすくってみると、カジカやヤツメウナギなどを見つけることもできます。清流でしか見られない梅花藻が、川の中一面に白い花を咲かせているのを見つけたときは、本当に感動しました。子どもの頃、こんな川が近くにあったら、きっと、毎日遊んでいても飽きなかったことでしょう。
水は岩にぶつかったり、滝から流れ落ちたりしながら空気中の酸素を取り込み、河床の微生物が呼吸しながら有機物を餌として食べることで、川は浄化されていきます。そして、微生物は虫たちの、虫は魚たちの、魚は鳥たちの餌となり、周辺の森を豊かにしていきます。川本来の姿を保つことが、きれいな水や豊かな生態系の源となることは、近年広く知られるようになり、様々な場所で、水や生き物を守る活動へつなげられているようです。
清らかな水をたたえた川に囲まれて暮らしていたら、それだけで、子どもたちは元気に、健やかに育ってくれるのでは、と期待しまうのは、決して大げさな話ではないように思います。
2014年6月9日
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