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車の中から

 カメラを構えると、否が応でも意識しなくてはいけなくなるのが、被写体との距離です。風景ならば、自分が前に出たり後ろに下がったりすれば、望む距離を得ることもできますが、相手が野生動物となると事情は大きく変わってきます。大きくはっきりと写し取りたいと考えてしまうのが常で、不用意に踏み出した一歩のために、相手がさらに遠くへ逃げてしまうことが少なくありません。
 そんな失敗を繰り返しつつ、プロの方が実施している方法を真似してみたりしつつ、近頃は車の中から撮る、ということが手段の一つに加わりました。不思議な事に、動物たちは車の中から向けられるカメラにはさほど気にも留めず、一方、車から一歩出た瞬時に、人間として警戒されることが多いのです。車は動いていても、生き物としては認識されていないようです。
 車の中から水鳥たちを眺めていると、リラックスしている時の彼らの行動はなかなか面白いものです。白鳥の家族の周りでちょこちょこと泳ぎ回るカワアイサ(カモの仲間)が1羽、さらにその近くにカモメが1羽。カワアイサとカモメはおこぼれを狙っているのか、時折、白鳥に近づきすぎてはカワアイサがつつかれ、カワアイサに近づきすぎてはカモメがつつかれる、ということを懲りもせず繰り返しています。それでも、決して相手に怪我をさせるほど激しいつつきではないので、「何だか煩わしいな〜」、「少しぐらいいいじゃないか〜」という鳥たちのやりとりが聞こえてきそうなほど、のんびりした情景です。
 適度な間合いを保つことは、相手の生活をむやみに乱さないマナーであり、それが人であっても動物であっても尊重されるべきものです。車から出てもっと近くで眺めていたい気持ちは捨てきれませんが、そこをぐっとこらえれば、もっと豊かな表情を見せてもらうこともできるのだと、近頃やっと学んだところです。

2015年11月30日

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今週のヒューエンス
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