夏の宿題
この花は、大好きな野草の中でも、カメラ泣かせの花です。クモマユキノシタは、日本では北海道の高山でしか見ることができません。葉は、石がごろごろとした地面にしがみつくように密に生え、小さな花は、針金のように頼りない茎の先についています。白い花弁の内側には黄色い斑点がついていて、真上からのぞいた時に、雄しべの赤と重なると、一層可愛らしく見える花です。
でも、この花が咲くのは、強い風が吹き抜ける風衝地です。真上からカメラで捉えようとしても、花を揺らす風が止むことはほとんどないのです。何枚撮っても納得のいく写真にならず、ここに座り込んで心行くまで花とカメラと向き合ってみたいものだと、何度思ったか分かりません。やろうと思えば、できないことではありません。でも、ここで花とともに30分も風に煽られ続けたら、真夏でも寒さで気が遠くなるに違いありません。現に、汗が冷え始めて身震いし、慌ててフリースを引っ張り出しました。
また宿題を残してきてしまったな、と心残りが半分、これを口実にまたここへ来られるかな、とたくらむ気持ちも半分。私も、花につられて何度もやってくるハチたちの行動とさほど変わらないなぁ、と我ながら思います。
2020年07月27日
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