日没後
午後4時半、ここは釧路湿原を一望できる展望台です。どちらを向いても秋色に染まった北海道で、人が集まりにくいだろう場所を考えて、迷った末にやってきたというのに、気が付けば次から次へと人が集まってきていました。地平線に向かって刻一刻と高度を下げ、オレンジの光を強くしていく太陽を、人と人との隙間から、頭の上から、カメラやスマホに収めようとしている人だかりを、やや離れたところから眺めていると、「こんなに人がいるのは初めて見たわ〜」というつぶやきが聞こえてきました。同感です!
釧路湿原と言えば、緑の季節に一番多く観光客がやってくるのだろうと思っていましたから、草紅葉も過ぎてしまった枯葉色の湿原に、これほど人が集まるとは想像していなかったのです。でも、西の空に雲は薄く、雌阿寒岳や雄阿寒岳はもちろん、日高山脈もうっすらと輪郭が分かるほど澄んだ空が広がっていたわけですから、夕焼けに絶妙なタイミングでやって来てしまったと言った方が正しいのかもしれません。
太陽がすっかり姿を隠してしまうと、一気に寒さが襲ってきました。ここでしか見られない絶景に大満足の人々が帰り、静けさを取り戻した湿原の先には、夕焼けの余韻が残っていました。ピンクや紫、藍や鉛を重ね合わせたかのような淡い景色は、夜が迫るほど、かすかにその濃さを増します。エンドロールを味わう最後の一人になったような気分で眺める空もまた、格別なのです。
2020年10月19日
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