海へ
十勝の海は、釣りが趣味だったり、サーフィンが好きだったりする人たち以外にとっては、そう身近な存在ではないような気がしています。近頃は、ジュエリーアイス人気で極寒に大勢が集まることもありますが、それも一年の中の限られた時期だけです。夏に海水浴でにぎわう、なんてこともありません。おかげで、いつ出かけても、どこへ出かけても、大抵、十勝の浜辺からは静かな海を眺めることができます。
でも、私にとってちょっとした問題なのは、一度見たあの景色がどこだったのか、いつもよく分からなくなってしまうことでしょうか。走りながら横道にそれて海にたどり着くことが多いからかもしれません。どこも静かな景色だからなのかもしれません。山道ならばなんとなくその場所を覚えていられるのに、何故か海辺の道はなかなか覚えられず、また行きたいと思っても、一度でたどり着けた試しがありません。近くに大きな沼があったはず、この町の漁港の近くだったはずと、目印を覚えていたはずなのに、着いてみたら違う沼だったり、別の町の漁港だったり、なんてことの繰り返しで、いつもミステリーツアーです。
漁船が港へ戻っていきます。沢山のカモメを引き連れているところを見ると、さぞや大漁だったのでしょう。淡い藤色の空に、もっと淡いサンゴ色のような筋雲がひかれ、日高山脈の影がすぐそこまで迫っています。このまま印象派の絵画にでもなりそうな景色を、記憶に刻みます。方向音痴ではないはずなのですが、せっかく見つけたこのお気に入りの場所も、また来られる自信は、あまりないのです。
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