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氷の姿

 十勝は凍れる日が続いていました。橋の上から川を見やると、ざらざらとした氷の塊が集まって、ゆっくりと流れていくのが見えます。とけかけたかき氷のように、シャーベット状にも見えますが、やがては海へと流れつき、波に洗われるうちに、透明でつややかな氷の結晶ができあがるのはずです。この辺りも、そのジュエリーアイスの故郷だと思うと、嬉しいような、身震いしてしまうような、何とも複雑な気分です。
 ざらざらとして、ごつごつとした、今はまだ、美しいという言葉からは少し離れた姿の氷たちを眺めながら、“宝石”とまで称されるようになる過程を想像してみます。小さな氷は、初めはくっつき合う仲間を集めて、ひらすら大きくなることを目指すのでしょう。小さなままでは、流れの中で、太陽の熱で、すぐに融けて消えてしまうからです。ほどなく十勝川と合流する頃には、今度は水面下で厚みを増していくでしょうか。岸に打ち上げられたりせずに、安定して流れていけるようになるはずです。初めは白っぽく見えていた氷たちも少しずつ透明度を上げていくのでしょう。仕上げに、海岸でごろごろと波にもまれながら表面が磨き上げられて、浜辺に打ち上げられる頃には、まさに宝石と呼ぶにふさわしい姿が完成しています。
 霧氷にフロストフラワー、アイスバブルにきのこ氷、この場所に暮らしていると、氷の多様な側面を実際に目にすることができます。ダイヤモンドやサファイヤのように、ずっと形を留めておくことのできない氷の結晶は、一期一会の面白さとも、いつも隣り合わせです。聞けば、氷の結晶構造は今までに20種類も見つかっていて、科学的にも、他に類が無いそうです。私たちが目にしている姿は、ほんの一部だということも、氷の、ひいては水の世界の、奥深い魅力につながっているのかもしれません。
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