緑の海で
晴れて暖かな5月が終わり、曇りや雨がちの時々ストーブが恋しくなるような6月が始まりました。なんだか季節が逆行しているような気もしますが、蝦夷梅雨は、思いのほか寒い日が多いのです。
曇の低い日に部屋にこもっていても、その隙間に青空が見え始めると、今度は外の方が暖かく感じられます。太陽の光に誘われるように外へ出て、土いじりを始めたり、自転車で散策に出かけたり、人間は恒温動物ではありますが、行動は変温動物とさほど変わらないかもしれないなと思えてきます。
冬の間、霧氷を見に何度も出かけている橋に行ってみます。今は緑の海のようです。風が通ると、緑の海原が波立ちます。時々、細長いカヌーのような形をした柳の葉っぱが、眼下から舞い上がってきます。水上のカヌーとは進み方は異なりますが、この形は風に乗るのも上手いようです。葉柄を軸にくるくると回転させながら空を目指していくのを見送ります。
いつも見上げるばかりの木は、真上から見下ろしてもきれいです。花びらのように、規則的に葉を広げているのがよくわかります。大部分は柳ですが、ところどころに白樺やマメ科の葉が混じって、形と色に変化が加わります。太陽の光は、植物たちにとってはご飯のように欠かせないものですから、効率よく葉を太陽に向けようとするのは当然のことなのでしょう。その必然が生む規則性の美しさに、多様性がもたらす不規則性の味わいが加わると、そのままテキスタイルや陶器の模様にもでもなりそうです。そんなことを思いながら切り取った草木の写真は、今はまとまった数になっていそうです。世の中に披露されることはないかもしれませんが、ひそかな財産となっていることは確かです。
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