枯葉の行方
積雪が遅い十勝は、とりわけ厳しい寒さにさらされる期間が長いため、少しでも植物たちの防寒になるようにと、秋に枯れた葉っぱをそのまま残して冬を越すことにしています。長く居座っていた雪の山がみるみる小さくなり、4月に入ってすっかりその姿が見えなくなったのを確認して、早速枯葉たちを片付けることにします。春一番の仕事です。
助っ人はガサガサと音を立てながら、無心で袋へ枯葉を詰めていきます。仕事が早く助かりますが、気をつけなければなりません。去年は、次々と虫に食べられてしまった中、かろうじて1本だけ残ったヒマワリの芽を、勢い余って抜かれてしまいました。これは西洋ネギ、こっちはパセリ、あっちはチューリップの新芽だから間違って抜いてはいけないと、よくよく念を押さなければなりません。
ぱりぱりに枯れて乾いたイチゴの葉を取り除きながら、「この作業は植物たちにとって本当に必要なのかなぁ」と、ふと思います。家庭菜園や園芸の本を見ても、病気の原因になるので枯れた葉は速やかに取り除く、と書かれています。でも、自然界では、風に飛ばされずに残った枯れ葉は、当然株の近くにとどまります。実際、雪の重みでぺたりと、それこそ布団のようになって地面を覆った枯れ草の隙間から、新芽が次々と出てくるのを、春の野山では当たり前に見かけます。その枯葉は、いずれふかふかの腐葉土にもなるはずです。
枯葉の扱いひとつ取っても、防寒か防疫か土壌改良か、どの側面から見るかによっても、一律に定まるものではありません。寒冷地で越冬できると言われる植物でも、年々、株が小さくなってしまうものもあれば、夏に球根を掘り上げなければいけないと言われるチューリップは、ここでは他の宿根草とおなじように夏を越すことができるようです。地域によっても、植物によっても、もちろん異なります。書いてあることだけを鵜吞みにしてはいけないな、としみじみ思うのは、何年経っても、いい意味でも、悪い意味でも、思い描いた通りにはならない植物たちの世界が、春になるとより鮮明に見え始めるからでしょうか。
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