スノーシューの威力
先週記録的な大雪に見舞われた火曜は、本当に静かに始まりました。いつも雪の積もった朝に響いてくるご近所さんが動き出した音も、大型除雪機の音もしない、夢うつつでそれを感じながら「あぁ、思ったよりも積雪は多くなかったのだ・・・」と思ったくらいでした。
しかし、実際には想定をはるかに超えていました。外へ出てみると、ほとんどのご近所さんはみんな既に除雪を始めていました。胸の高さまである積雪は、高性能の吸音壁となり、人の気配をことごとく壁の内側へ閉じ込めてしまっていただけだったのです。
除雪道具を取りに物置まで行こうにも、泳ぐように手で、足で、全身で雪をかき分けながら進むしかなく、ほんの数十歩の距離にも息が上がりそうです。これは雪山トレーニングそのものではないか・・・。
幸か不幸か、朝の雪はさらさらの軽いものでしたが、それは足元が不安定であることと同義でもあります。雪山登山では弱層チェックという雪崩の起きやすさを調べる方法がありますが、それをするまでもなく、雪崩の危険性大です。足場を固めながら雪を山にして積んでいこうにも、何度も踏み抜いては体が埋まってしまい、起き上がろうにも一人では起き上がれません。もしこの作業を人知れずやっていたら命にかかわるかもしれないという危機感と、一方で、すぐに雪に転がってしまう姿はただ遊んでいるだけにも見えそうだと気付いたとき、あっ、と思いつきました。今こそ、スノーシューの出番だと。雪に埋もれずに歩くためのスノーシューはもっぱら冬の遊び道具の位置づけでしたが、今回ばかりは、いえ、今回こそその威力を存分に発揮し、雪かきに大いに役立ったのでした。
さて後日談。除雪が大変だった話しの中で、人生においてもアウトドアにおいても先輩にあたる社員も、スノーシューを履いて雪かきをしていたことが判明しました。お互いに数年ぶりに引っ張り出してきたけれど、本当に役に立ったと大盛り上がりでした。アウトドアの道具や衣類には、災害時にも役立つ性能を備えた物が沢山ありますが、自宅玄関から半径数メートルの範囲で、スノーシューを心からありがたいと思う日が来るとは、つゆほども想像していませんでした。