アパートとマンション
鳥たちの子育てが始まる季節です。着々とマイホームづくりが進んでいるのがアオサギです。カラマツの暴風林はさながらアオサギアパートで、特に、近くに餌場となる川が流れている林などは大人気の満室状態です。大きな鳥ですから、俊敏な動きではありませんが、ひそかに場所の争奪戦が繰り広げられているのか、空から飛んで戻ってくる別のアオサギに対しては、時折大きな警戒の声が上がります。長い首を縮めてじっと枝に止まっている様子は、どちらかと言えばぬぼーとさえない立ち姿なのですが、実は、子育てに最適な巣をつくりあげるため、この場所の死守を任された最重要ミッションを遂行中なのかもしれません。
さて、アオサギアパートがにぎわう頃になると、スズメのマンションが解散へと向かいます。こちらは子育てではなく、厳冬期の寒さをしのぐために歩道の生垣などにできるスズメたちの家です。太陽が高くなり始めると、マンションからぽこぽこと顔を出して日向ぼっこを始める福良雀の可愛さは、冬の風物詩のひとつですが、そろそろ彼らも子育てのためにそれぞれの巣の準備へと向かい始めます。
人間の世界も引っ越しの季節です。どことなく浮足立つような人の流れの中には、かすかな緊張感と大きな期待とが混ざり合っています。これもまた春ならではです。
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