白一色
春を感じ始めた途端、雪の日がやってくるようになりました。でも、２月初めまでずっと雪のない冬でしたから、白銀の景色が嬉しくてたまらない気持ちにもなります。
久しぶりに雪の山々を眺めに行ってみました。この季節、雪の壁に囲まれた狭い山道をくねくねと上っていくのは、バックカントリーのスキーヤーたちを乗せた車ばかりで、ちょっと雪景色を見に、などという人はほとんどいないのでしょう。スキーウェアも着ていないジーンズ姿の私が車から降りると、「そんな恰好で何をしに来たのだろうか？」と不思議がる視線を向けられているのを感じますが、そんなことはお構いなしです。
この日は曇り空でした。太陽が照っているわけではないのに、白一色の世界はまぶしくて仕方がありません。真っ白な山と空の境目が融け合いそうです。なだらかな中腹の森林限界を超えた上には、雪の断崖が城壁のようにぐるりとそびえています。
針葉樹の隙間に見える小さな黒い点は、スノーボーダーたちです。一体あそこまでどんなルートで行ったのだろう？そんなことを考えているうちに、彼らは雪の斜面をスルスルと滑り始め、思い思いのコースを選びながら、あっという間に私の足元の谷底まで下りてきました。どうやらそこが滑走のゴールであり、そこから急な斜面を登りきったところ、つまり私が今立っている場所が一連のルートの終着点のようです。大きなボードを担いで、最後の最後にこの谷を登らないといけないのか・・・好きな事をするというのもやっぱり大変そうです。でも、あそこからの景色はきっとまた美しいのでしょう。ウィンタースポーツがからきしできない私は、そんな景色を想像しながら、描かれるシュプールを、目を細めて追うのでした。
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