背負う
寝袋にテントに防寒着、食糧に水に燃料、山でたった1泊するためであっても、担がなければいけない荷物の重さが10?を超えることは珍しいことではありません。普段はめったに運ぶことのないような重さを背負い、平地では歩くことのないような距離の、ただでさえつらい山道を、誰に頼まれたわけでもなく大変な思いをしてまで何故歩くのか、我ながら不思議に思うこともあります。
そして、いつも感じるのは、人間は本当に弱い生き物だということです。ヒグマに追いかけらたら、雷雲に入ってしまったら、食糧や水が尽きてしまったら、岩が落ちてきたら、もし歩けなくなってしまったら。どんなにささいなことでも、1つ間違えば命に関わります。危険に備えようとすればするほど荷物は多くなり、これだけの重さを背負わなければ命を守ることができないほど、自然の中ではか細い存在なのだということを実感するのです。
身一つで自由に飛び回り、深い山で冬を生き延びる動物たちを見ていると、自然と畏敬の念がわいてくるのも、やはり、自分にはない強さを感じるからかもしれません。さまざまな道具で身を守らなければならない人間ではありますが、私たちに強さを与えてくれるものが、"物"だけでないことも事実です。ふと広がった景色に、空気に、水に、心が満たされ、疲れを忘れ、活力を取り戻した場面が何度あるでしょうか。自然にとって、人間は時にやっかいな生き物かもしれません。それでも、私たち人間が、自然の美しさを理解し伝えることのできる、唯一の存在でもあるという重さを、忘れてはいけないと思うのです。
2015年09月28日
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