早春の谷地
吹く風に南の空気が混じり、加速度的に路肩の雪山が小さくなり始めました。雪原の下で太陽の光を待っていた小麦も、若々しい緑の表情を見せて、大地にも明るさが戻りました。
春がゆっくりと進む山の陰では、雪がところどころ水に姿を変え始め、細い木々と相まって不思議な景色を造りだしています。道路から数歩先に広がっているのに、どこか遠い太古を思わせるのは、谷地(低湿地)は、人が容易に踏み込めない場所でもあったからかもしれません。大きな木が育ちにくく、下手に足を踏み出せば、エゾシカでも抜け出せなくなるような沼地もあるのだそうです。
それでも、セピアがかった艶やかな早春の谷地が私はとても気に入りました。もう少しすると、乾いた土埃を巻き上げる、少々やっかいな春の嵐がやってきてしまいます。一言で"春"とくくっても、見られる景色は刻々と変わっていきます。今年はどんな新しい景色に会えるのだろう、そんなわくわくする期待も、気温とともに高まってきました。
2016年03月28日
- カテゴリ
- 今週のヒューエンス
- 更新日
- 閲覧数
- 589