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全速前進

 北海道には、本州では見られない生き物が沢山いますが、その逆もやはりあります。目の周りが黒いことからパンダガモという愛称をもっているミコ(巫女)アイサは、本州では越冬地がいくつもあるそうですが、北海道ではレッドデータブックの絶滅危急種に指定されていて、頻繁に見られる鳥ではありません。北帰行の渡り鳥たちに交じっているのを、根気よく探せば見られるでしょうか。道内で繁殖する個体もいると聞きますが、きっと、群れの中から見つけ出すより、数段、観察の難易度は上がることでしょう。それなのに、身近な場所で、思いもよらず見つけてしまったりするところは、北海道の人と生き物の生活圏が、近い距離にあることの証でもあります。
 よく出かける散策ルートで、よく見慣れたカワアイサのメスの群れの近くを泳いでいた一回り小柄な白い鳥が、まさにそれでした。警戒心が強いのでしょう。勝手知ったる顔のカワアイサたちとは違い、きょろきょろと落ち着きなく辺りを見回しながら、群れに混じっているというよりも、つかず離れずの距離を保っているようにも見えます。
 私も、そろりそろり距離を保ちつつも、この幸運を逃すまいと、カメラのピントはミコアイサにロックオンです。でも、その見えない圧力は、もしかしたら伝わっていたのかもしれません。写真を撮りやすそうな開けた空間に出るや否や、全速前進で川をのぼっていきます!途中からは、カワアイサの群れもそっちのけで、水面にⅤ字の波紋を広げながら、ひたすらカメラの視界から遠ざかろうとしているように見えました。
 野生の生き物を追うときの宿命ではありますが、こんなに必死に逃げられたのは久々です。素知らぬ顔をされながらも、気がついたら遠ざかっている、というのがいつものパターンだからです。でも、冷静に考えると、どちらもなかなか寂しい反応には変わりありません。片思いって、いくつになっても切ないものだと、久しぶりに再確認させられたような気がしました。
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