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ユウレイ予報

 大雨の後の真夏日となれば、号砲を鳴らしたかのように、草木も虫も動物たちも一斉にうごめきだします。ドロノキが綿毛を飛ばし、夏のにおいをぷんぷんとさせた朝の空気に身を投じると、蒸し暑さが苦手なことも忘れて、その生き物たちの熱量に巻き込まれていくことに、心地よさすら感じます。
 針葉樹の森は、高い木のおかげで、ちらちらと木洩れ日程度の光しか届いていませんから、さぞ涼しいだろうと想像するのですが、そこはやはり、“大雨の後の真夏日”です。木々の呼吸さえも、体温を放出しているんじゃないかと思えるほど、蒸し暑さがあります。
 歩き始めて数分としないうちに、太い木の根元でギンリョウソウが咲いているのを見つけました。そう珍しい花ではないのでしょうが、いつでもどこでも見られるという訳でもなく、最後に見たのはいつだったかと思い返せば、記憶を何年もさかのぼらなければなりませんでした。ユウレイタケの別名をもっているように、咲いたばかりの透き通るような白い花は、やはり特別な存在で、「今日は当たり日だ!」と嬉しくなります。
 高ぶる気持ちとはうらはらに、天気と体力に正直なわが身は、なかなか前に進みません。針葉樹の根が無数に張り出し苔むした森の中を、数メートル進んでは息が上がり、数メートル進んでは息が上がりを繰り返します。立ち止まって呼吸を整えていると、木の根のそばに、花豆くらいの、真っ白な卵のようなものが、いくつも土から頭を出しているのに気づきました。まさか!
 白い卵の正体は、最初に見つけたギンリョウソウの芽です。あっちにも、こっちにも沢山あります。これは、数日のうちに、このあたりがギンリョウソウだらけになりそうです。夏の夜の幽霊話は、背筋をすっと寒くしてくれますが、こちらのユウレイは見た目が涼し気です。背景が違えば、氷や雪でできていると言っても、もしかしたら信じてもらえるかもしれません。あちこちに白い花を咲かせている森の景色を想像すると、それはまた、実に面白い涼になりそうです。


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