還る
そこは、北海道では数少ない、南国のような澄んだエメラルドグリーンの海を見ることができる浜辺です。断崖に囲まれた小さな砂浜は、海水浴には水が冷たすぎるので、夏でも静かな場所ですが、歩けばきれいな貝を沢山拾うこともでき、海を眺めているだけでも癒されるような場所です。ですが、何年かぶりに訪れたこの場所には、驚くほど大量の漂流ごみが打ち上げられていました。網や浮き、木やプラスチック、金属の破片、ペットボトルや缶などが、数十メートルにわたってごみの山をなし、代わりに、かつては沢山落ちていた貝殻が、とても少なくなっていました。
大量のごみがどこから流れてきたのか、という疑問もありますが、それらの大部分がプラスチック製品ばかりだということに、何とも言えない苦い思いを隠せませんでした。木や石のものであれば、やがて土へ還り、植物に取り込まれて花を咲かせ、やがて動物たちのえさとなり、形を変えて地球をめぐっていくことになります。でも、そのシステムから大きく外れたプラスチックは、自然に還ることも、自然の景色になじむこともできずに海を漂い、やっかいな存在として打ち上げられてしまいます。
便利な生活と引き換えに失う美しいものがあること、地球上のものは全てつながっていて、自分の行いが、もしかしたら地球の裏側までも影響するかもしれないということを、普段の生活ではなかなか気づくことができません。でも、美しい自然の姿を知れば知るほど、気付かなかったで済ませるのは、とても無責任なことなのではないかと思えてなりません。
2014年5月26日
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