初登り
ここ何日か続いている春霞は、太陽の光をほどよく分散し、春の暖かさを演出しています。小さな虫たちも飛び始め、夏鳥のムクドリも戻ってきました。自然と、何かを始めたい気持ちがわいてきます。
いつもの年よりも1ヶ月ほど早い初登りで、北海道の最高峰、旭岳へ向かいました。夏の間は山容を美しく映す姿見の池も、まだ雪の下に眠ったままですが、ところどころハイマツの葉が雪の下から顔をのぞかせていて、着実に太陽の熱が行き届いていることが分かります。
途中、顔を切られるように冷たく、ふんばらなければ飛ばされてしまいそうな、荒々しい風の通り道を越えて、旭岳の頂上に到着しました。
旭岳は下から眺めると、独立峰のようですが、頂上から見渡すと、その先に広い大雪の山並みが続いていることが分かります。「富士山に登って山の高さを語れ、大雪山に登って山の広さを語れ」という大町桂月の言葉通り、どこまでも歩いて行ってみたくなるような空間が、どちらを向いても広がっています。冬の間は環境の厳しさゆえ、この先に進む人はほとんどいないと聞きますが、あと2ヶ月、3ヶ月待てば、緑の濃淡に縁取られた世界に変わるでしょう。その季節が待ち遠しくもあり、白い季節がまだ名残惜しくもあり、そんなことを思いながら眺めている時間が、ただ楽しくもある春です。
2015年03月30日
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