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サマニユキワリ

 モノクロームのような雪の世界から抜け出して、新しい色が生まれ始めました。
 水の粒を集めた小さな蜘蛛の巣が、時折差し込む日の光を散乱して、ビーズのネックレスのようにきらきらと輝いています。早朝だからなのか、それとも濃い霞のせいなのか、巣の主は見当たりません。開館前の美術館を独り占めするかのように、あちこちの枝に掛けられたネックレスを見比べながら歩く朝も、なかなか楽しいものです。
 ヒメイチゲの小さな白い花がぽつりぽつりと咲く林を抜けると、サマニユキワリがピンクの花を沢山つけていました。まだ土色の石ころばかりが目立つ道の先に、前触れもなく現れた華やかな春に、誰もが足を止めて見入ります。雪を割って花を咲かせるという名前のように、早くからこの花を見ることができますが、単独もしくは数株が散らばっているところが多い気がします。でも、この場所では毎年、真っ先にこの沢山のサマニユキワリの花が咲き始めます。寝ぼけまなこの仲間たちの目覚めを促すかのように、元気いっぱいの笑顔です。
 サマニユキワリはユキワリコザクラの変種型で、他の植物が育ちにくい特殊な地質に適応した植物です。逆境は順境にもなる。私たちには難しいように思えることも、こんな小さな命がその可能性をしっかりと証明してくれています。山を歩いていると、実はそんな花が当たり前のように咲いているのです。

2016年04月25日

カテゴリ
今週のヒューエンス
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