茶色い嵐
しっとりとした雨が去り、トラクターが広い畑の土を滑らかに耕していくと、茶色の濃淡をつけたまっすぐな畝が出来上がってゆきます。白い雪を残した山々を背景にして小気味よく進む畑の準備は、暖かな陽気も手伝って、本当に気持のよい風景です。
日曜日、そんなのどかな春をかき乱す大風が吹きました。気温が上がる時期には、毎年、強い風が何度か吹きます。雪が融け始める3月の終わり頃は吹雪のような嵐の姿で、そして、ビートの苗が植えられる5月はじめ頃には乾いた土を巻き上げる嵐です。
真上の空は青いのに、低い空は黄色く染まり、遠くからでも普段とは違う状況を伝えていました。車が進むにつれて、茶色い風が横切るようになり、ついには前を走る車のライトも道路の白線も見えないほど、辺りが茶一色に染まりました。生まれて初めて、冬のホワイトアウトを経験したときにも感じた、足のすくむような怖さに襲われましたが、幸い、十勝平野を抜けると茶色い嵐も止みました。
思えば、春先の十勝平野は、ところどころ真皮がむき出しになっているようなもので、まだ作物の植えられていない畑からは、吹く風に容易に土を巻き上げられてしまいます。短い夏に向けて農家の方々が準備してきた畑だということを思うと、春の嵐は何とも酷な存在です。豆やトウモロコシが植えられるのはもう少し暖かくなってからでしょう。今はただ、ビートや小麦が早く根を伸ばし、しっかりと大地にしがみついていてくれるようにと、祈るばかりです。
2016年05月09日
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