どうして山に登るのか、そう聞かれて困ったことがあります。辛く、キツイことをなぜ進んでやるのか、不思議に思う気持ちは当然のことでしょう。私も、マラソンのレースを見る度に、どうして42.195kmも走るのだろうと思ってしまいます。皆の疑問に、「そこにエベレストがあるから」と哲学たっぷりに返せれば恰好もよいのでしょうが、景色が美しいから、達成感があるから、おにぎりが美味しいから、思いつくのはどれも欠かせない要素ではあるものの、それが続ける理由かと問われると、少し違うような気がしてしまいます。
　反対に、何かを始めた理由を語ることはとても簡単です。山であれば、最初は学校の遠足だったり、友人に誘われてだったり、山ガールの恰好に憧れてだったり。でも、その後の一歩は何に促されているのでしょう。何度登っても、山登りが辛いことには変わりはありません。きっと、マラソンもいつも辛いに違いありません。体は疲労困憊になるのに、なぜまたすぐに辛いことに足が向いてしまうのか。本当に不思議なものです。
　考え続ければ、その理由をある程度まで突き詰めることはできるかもしれません。でも、この問いに答えを出してしまったら、途端に興味が無くなってしまうような気がしてしまうのはなぜでしょうか。科学が全てを明らかにしてしまったら、世の中は味気のないものになってしまうでしょう。反対に、全てを解明できないから、科学も人を魅きつけます。よく分からないものにこそ、魅力が沢山詰まっているのです。答えの出ない問いをもつことは少々居心地が悪くもありますが、一方で人生の潤いにもなる、時にはそんな風に考えてみてもいいような気がします。

カテゴリ

今週のヒューエンス

更新日

2017-08-28

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