草抜き
苔に覆われた大きな石が積まれ、その脇には鏡のように空を映す池があり、その間を縫うようにシャクナゲやツツジが、足元には小さなサクラソウが咲くような、そんな風光明媚な自然景観を指して、よく「日本庭園のようだ」と言います。実際、日本庭園と地名のつけられた場所をもつ山もあります。でも、はたと考えます。日本庭園の方が、野山の景色に倣って造られているのではと。
夏の匂いが漂い始めた日曜の朝、意を決して畑の草抜きに取り掛かりました。スギナやナズナがぽつぽつと生えたところから始め、シロツメクサが優先する奥へと進んでいきます。地面を這うように広がるシロツメクサは抜くのが厄介で、しかも、その間を埋めるように他の植物たちが密生しこの日一番の山場です。スコップで土を掘り起こしたり、力の限り引っ張ってみたり格闘していると、最後の最後に残った密集地帯の中にぽつりと小さな白い花が咲いているのに気付きました。若いクローバーに囲まれて咲く一輪の白い花、その組み合わせは実に可愛らしく、一心不乱に没頭していた草取りの手を止めさせました。よく見ると、3枚組みの丸い葉の間に、ピンと生えたスギナも、ハート形の種をつけた背の高いナズナも、空間に絶妙な変化を与えています。このまま抜き去ってしまうのはもったいない。何の変哲もない草花たちに、心を動かされてしまいました。
自然が創り上げる美はどうしてこう絶妙なのか、いつも不思議でなりません。無造作なようで計算され尽くしているようにも見え、そして私たちが再現しようとしてもしきれないものでもあります。だからいつの時代も人間は美術を通して、科学や産業を通して、そして日々の生活の中で、その美を追いかけ続けているのでしょう。
2018年06月04日
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