味
どんなものも、生まれた瞬間から、新しさからは離れていく運命にあります。物であっても、生き物であっても、新しいと言われなくなってから続く時間のほうが、大抵は長いのです。鮮やかな色は少しずつ薄くなり、逆に落ちない染みがついたり、知らないうちに傷が増えたりしていきます。長く雨風にさらされて現れた変化が、劣化したと見られるのか、それとも味が出たと見られるのか、その分かれ目は、人にあるのだと近頃感じます。信念をもってつくられたもの、大切に育てられたもの、丁寧にメンテナンスされたもの、つまり心を込められたものは、人に伝わる"味"を備えていくのではないか、と。
この褪せ具合もまたいい色だ、汚してショックだったときのことは今でもよく覚えている、傷はあってもよく働くのだ、そんなふうに私たちも、良いところも悪いところも愛情をもって接してもらえるようなものを、世の中に出していきたいと、そう思います。"新しい"に溢れた今日が、味のある時代の始まりとなることを期待して。
2019年04月01日
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