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朽木

 もしかしたら、3年前の台風の影響なのかもしれません。近所の河川敷を散歩していると、白っぽく立ち枯れた大木がところどころに見られます。そこには、青々としたつる植物がずっと高いところまで伸び、時折、開いた穴から親鳥が飛び出してくることもあります。こうした景色を見るたびに思い出す言葉があります。何年か前、マングローブ林をめぐるツアーに参加した際に、ガイドさんがおっしゃっていた言葉です。「枯れて倒れたマングローブの木々は、取り除いた方が、景観がよくなるのではないか、という声をいただくことがあるのですが、例え枯れていても、取り除いてしまうと周りの元気な木々まで倒れやすくなってしまうのです。」と。
 生き物の世界は、決して生きているものだけで成り立っている訳ではないということをいつも考えさせられるのです。枯れた木は、まだ細く若い木を支え、林床に光を届かせ、昆虫や微生物の餌となります。それが、かつて大木だったと分からなくなるほど朽ち果てるまでにも、きっと何十年もかかることでしょう。それまでの間、他の生き物たちのゆりかごとなって、ゆっくりゆっくりと時を過ごすのです。白く立ち枯れた木々に威厳があり、苔に覆われた緑の朽木に優しさがあるのは、最後まで役目を果たすのだという矜持が残っているからなのではないかと、時々思えるのです。

2019年07月08日

カテゴリ
今週のヒューエンス
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