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瑞々しい

 ふた月ほど前は皆が雨を待ち望んでいたのですが、今は太陽が恋しくてなりません。せめて週末ぐらいは晴れに、などと空が融通を利かせてくれるはずもなく、しばらく続いている曇りと雨とのモザイクな天気に恨み言のひとつも言いたくなるのは、なかなか野山に足を運べないもどかしさからでしょう。平地ではジャガイモの花も終わり、少しずつ実りの季節へと移っています。山の上では、今頃、いたるところで花が咲き競い合っているだろうと想像すると、休みの日だと言うのに分厚い雲の下に押しとどめられているこの状況が、一層惜しく思えてきます。
 せめてもと、車とロープーウェイで標高を上げていくと、思ったとおり高原にはチングルマやエゾノツガザクラ、イワブクロやメアカンキンバイなどが花びらをいっぱいに広げていました。少し前まで雪原だったと思われる谷間は、今は見事なチングルマの花畑です。
 それにしても、今年は花たちの瑞々しさが際立っているような気がします。もちろん、訪れた時期がよかったということもあるのでしょうが、このすっきりとしない天気のお陰でもあるかもしれません。霧の多い場所の植物は発色がよいと聞いたことがあります。乾燥や紫外線の影響を霧が抑えてくれるからなのだそうです。雨や曇りの日は、彼らにとってはつかの間、緊張を緩められる時間なのかもしれません。私も、空模様に一喜一憂するばかりでなく、雨の日には瑞々しさを充電するぐらいの、ゆったりとした心の持ちようでありたいものだと思います。

2019年07月22日

カテゴリ
今週のヒューエンス
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