氷の下の世界
夏のターコイズブルーの湖も見たことがありますし、雪上トレッキングしたこともありますが、ターコイズブルーの"氷"に覆われたオンネトーを、まだ一度も見たことがありませんでした。その幸運に立ち会えるのは、真っ白な雪が湖を閉ざしてしまう前、11月下旬から12月初めの数週間と言われていますから、週末にしか向かうことができない身にとっては、年に1度か2度しかない貴重な景色なのです。
日曜は朝から雲がかかり、時折雪がちらつくような天気でした。オンネトーの色は、太陽の光によって大きく左右されるため、ターコイズブルーは期待できないだろうと覚悟して向かいましたが、視界が開けた先に見えたのは翡翠のように艶やかな氷の湖面でした。
既に何人もが氷の上で写真を撮ったり、湖をのぞき込んだりしています。対岸からはスケートで滑っている家族のはしゃぎ声が響いてきました。続けとばかりに勇んで氷の上に乗ると、アイスバブルの下で水が揺らいでいるのが見えました。どうやら、氷の厚さは5センチ程度のようです。油断をすると、ミシッ!と氷にひびが入り、その度に「ドキッ!」として動きが止まります。接地面積が大きい方が氷は割れないだろうと、思い切って氷の上にうつぶせに寝てみると、そこには不思議な世界が広がっていました。
青い湖の底に、カエデやシラカバの葉がおのおのの色を残したまま沈み、その上に小さな魚が見えました。真上から人間がのぞき込んでいるにも関わらず、魚は逃げることもなく、ただ気のままに漂っています。それは、グラスボートで海の中を観察するのにも似ていますが、"氷"という蓋のお陰で、人間が頭上を歩いていようが、寝そべってのぞいていようが、水の生き物の動きに影響することはないようなのです。もちろん、人間が船酔いするような波もありませんので、ただひたすら、静かな水の世界を上から静かにのぞき込んでいるという、ありそうでなかなかない経験なのです。
凍った湖上での遊びの楽しさは想像以上でした。発見も沢山ありました。続きは、次にターコイズブルーの氷に出会えるチャンスがめぐってきたら、その時に紹介してみたいと思います。週明けの帯広は、朝から湿った雪が降り積もりました。もしかしたら、あの翡翠色の湖は、もう雪の下で眠りについてしまったかもしれません。
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