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透ける花びら

 フキのように大きな葉っぱの真ん中から細く伸びた茎の先に、白い花を咲かせているこの植物はサンカヨウと言います。雪渓がとけてほどなく、少し薄暗い木陰で可憐な花を咲かせ、秋には大粒の青い実をつけます。この時期、雪田跡では、同じように白い花を咲かせるチングルマやエゾノハクサンイチゲが、広大な花畑を作っています。それを目当てに毎週のように通ってくると言うアマチュアカメラマンにも時々出会いますが、この日、私にとっての主役は何といってもサンカヨウです。
 朝、湿気を含んだ東風は、山の斜面で次々と白い霧の波をつくり出していました。平地の上ではところどころ青空ものぞいていますし、山の上でも、霧が雨を降らすほどの雲にはならないけれど一向に展望が開けない、悩ましい空模様です。
 そんな中、朝の霧を含んだサンカヨウは、花びらが透けていました。

 ほんのりと、後ろにある雄しべの黄色が透けているのがわかるでしょうか。水にぬれると透けて、乾くとまた白に戻るという、不思議な花びらをもっているのがサンカヨウなのです。
 水分量が多いと、ガラス細工のように花びらの透明度は増すそうです。今回私が出会ったサンカヨウは、淡い摺りガラスと言った感じです。それでも、とても幻想的で、儚げで、触れてはいけないような空気を漂わせています。本当に不思議で美しい・・・
 太陽の下では決して出会えない姿を前に、どんよりとした曇り空にこれほど感謝した日はありませんでした。

2020年07月13日

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今週のヒューエンス
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