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贅沢

 最近キャンプを始めた人が、「自分で起こした火を無心で眺めている時間が、とても贅沢だと感じる」と話をしているのが、ラジオから聞こえてきて気づきました。"贅沢"には2種類ある、と。随分と奮発して美味しいものを食べたというような時、そしてもう一つは先に書いたように焚き火を眺めるような時です。前者は身の丈よりも高価なものを手に入れたりする、文字通りの贅沢です。後者は、実際には多くのお金がかかるものではありません。
 土鍋でお米を炊いてみること、早朝の空気を吸い込むこと、夕暮れの空を眺める時間、冬の森でコーヒーを淹れること・・・こうした贅沢は、誰でも享受できるのものだったり、時間や手間のかかることだったりします。なのに、今では、お金をかける贅沢よりも、価値のあることのように感じてしまうのはどうしてなのでしょう。
 こうしたものの中には、かつては当たり前で、贅沢だとは思われていなかったことも含まれています。でも、根底に流れているのは、日々を丁寧に暮らすことの価値のような気がします。そこから離れてしまったことに気づいて、速度を緩めてみたり、向きを少し変えてみたり、時には戻ってみたりしたとき、自分にとっての "贅沢"を見出すことができるのかもしれません。
 ねぐらへ戻るマガンの夫婦。暮れかけた紺藍の空を二人占めです。贅沢だなあ、と見上げます。

2021年04月05日

カテゴリ
今週のヒューエンス
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