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表か裏か

 このようなことを書くと、批判の雨が降りそうではありますが、十勝から眺める十勝岳連峰は、何となく"裏"のような気がしてしまいます。十勝岳という名前なのだから、十勝から見えるのが当然"表"だろうと、理屈は語っているのですが、どうしてでしょう。北海道の南の端からズズッと伸びた日高山脈が十勝の北の端の辺りで収束し、その少し先に見えるのが十勝岳連峰です。帯広からは少し遠く、よほど好天でない限り、すっきりと望むことができない存在です。もちろん、遠いがゆえ、日高山脈よりもずっと小さくしか見えません。
 じゃぁ、どこからの眺めが表かと問われれば、言わずと知れた道内有数の観光地でもある富良野や美瑛からでしょうか。十勝岳が見たいと思った時に、私自身も迷わず向かう先でもあります。なだらかな緑の富良野岳に始まり、茶色や黒の岩肌がむき出しのピークをいくつも従え、白い噴煙を上げ続ける十勝岳が中央に鎮座し、美瑛岳や美瑛富士の美しいシルエットが続きます。四季折々の景色は、何度訪れても、近くから仰ぎ見ても、遠くから眺めやっても飽きることがありません。
 羊たちが放牧されている丘を通りました。小高いその場所からも山々が一望できました。人の気配に、走って近づいてきた羊たちも、こちらが餌のひとつも持ち合わせていないことを悟るや否や、すぐに食事の続きに戻っていきました。むしゃむしゃと歩みを進めていく後ろ姿も、この空気にはよく似合っています。そう、結局のところ、表か裏かという議論は、この景色の中にずっと暮らしているみんなに対する、うらやましい気持ちの裏返しなのかもしれません。私は十勝民で、あなたは十勝岳なのに・・・、と。太陽が西へ沈んでしまうと、単身赴任のお父さんのような気分で、後ろ髪をひかれながら十勝に向かって車を走らせるのです。

2021年10月11日

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今週のヒューエンス
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