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風よ吹け

 木を植えたいと思い立った時、話を聞いた庭師さんは、とても大切なことを教えてくれました。植えて1年以内には、添え木を外さないといけないということです。そうしないと、自分で根を張る力が育たず、自立できない木になってしまうと。
 室内で育てている観葉植物が、ひょろひょろと間延びしてしまい、どうしたらしっかりとした立ち姿になるのかと調べていたら、植物は「風で育つ」という言葉にも出会いました。もちろん、日光や水、肥料が適切に供給されることも重要ですが、風が当たらないと、体を支える幹や枝が細く頼りないままになってしまうそうです。
 植物にとって、風ってどんな存在なんだろうと考えてみました。根を下ろしたらもうそこから動くことができない草木にとって、風は新鮮な空気を供給するという重要な役割を担っていますが、強く吹けば必ずストレスを与えることにもなるでしょう。しかしそのストレスは、自分がどうあるべきかを教えてくれる存在でもあるのではないかとも思いました。どこへどう根を張れば、倒れずに生きられるのか。どこへ枝を伸ばし、葉を広げれば、飛ばされずに済むのか。一年中風に吹かれながら、そこで生きる術を身に着けていくのではないかと感じます。
 秋には珍しい大風が吹いた週末、当時植えた木は、オレンジに色づき始めた葉を大きく揺らしながらも、しっかりと立っていました。添え木を外して1年ぐらいは、強い風が通るたびにひやひやと見守っていましたが、今は頼もしい姿に近づきつつあります。受けた風の分だけ根を伸ばし、大地をがっしりと掴めるようになったのでしょう。風に感謝です。

2021年10月18日

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