春の一日
太陽の目覚めが日に日に早くなっているので、早朝と呼ぶのはためらわれるくらいの時間ではありますが、起き抜けのボーとした身体に響いてきたのは、ハクチョウたちの声でした。十数羽の群れが、統制の取れたⅤ字をつくりながら、北へと向かっていきます。その後にも、もう一群。今日の朝食会場へ行くところなのか、それとも北帰行へ発ったところなのかは、さすがに分かりませんが、やや緊張の緩んだ空気は、きっと旅立ちへと背中を押していることでしょう。宗谷で、地平線上に長い長い筋を引いていたガンの群れを見たのは、確か連休の頃だったな、などと思い出しながら見送ります。
こんな風に明けた一日は、どういう訳か、生き物たちとの出会いの多い日となりました。畑仕事をしながら見かけたのは、マルハナバチ。ブーンと、マルハナバチと知らなければちょっと恐怖を感じるくらいの羽音を響かせながら、まだつくしばかりの草むらを探索しています。去年、カメラを向けたことで威嚇されたタンチョウには、全く同じ場所で再会です。足環の番号で、同じ個体だと分かりました。その先では、また別のタンチョウ夫婦にも会います。無警戒とまではいかないものの、車が止まったすぐ脇でも、食事の嘴が止まりません。子育てに向けて体力をつけなければならない時期なのでしょうか。本州で越冬していただろうキジバトも戻ってきています。高みから、デーデー、デーデーと静かに鳴いています。夕暮れの霞と同じ黄金色をした、キタキツネのふさふさの冬毛姿も、もうそろそろ見納めかもしれません。
旅立つ者、帰って来る者、眠りから覚めた者、新しい命を迎える者、装いを新たにする者、陽気に誘われて皆が動き出しています。にぎやかな季節の始まりを予感して、心が浮きたちます。
- カテゴリ
- 今週のヒューエンス
- 更新日
- 閲覧数
- 861