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ああ止まれない

 十勝平野は、関東平野に次いで日本で2番目に広い平野です。北海道を東西に渡す道東自動車道から分岐した帯広広尾道は、日高山脈と並行するように十勝平野の真ん中を南北に走っています。少し高い位置から眺めることができるからでしょう。この道を走っていると、この平野の広さをつくづくと感じ、また同時に、大地が広いということは空が広いということと等しいのだとも、実感します。
 夏至まであとひと月ほどのこの時期の日の出は、もう充分に早いものです。いつもよりもずいぶんと早起きをしたはずなのに、すでにまばゆい光を大地の隅々にまで届けようとしている太陽を眺めながら、早朝というのはいったい何時頃を指すのだろうかと、寝ぼけた頭でぼんやりと思います。でも、広い空の西側には、空色とも灰色とも、また薄いとも厚いとも判別しがたい雲が、南の方まで広がっていました。高速道路に乗って、今日向かうのがその雲の先だと思うと、天気の行方も心配になってきます。
 薄い雲が流れてきたのか、それとも自分が移動しているからなのかはわかりませんが、気づくと太陽の右側に幻日の虹のかけらが見えました。いつも、通勤途中や建物の窓越しに見つけることが多かった幻日を、こんな広々とした、言わば空と大地しかないような場所で見ることになるとは思っていませんでした。眠気が一気に飛んで、「カメラ!」と思ったものの、トランクには手が届かず、やむなく携帯電話を取り出します。高速道路の路線がやや南東に向くと、今度は幻日が太陽の左側に移りました。太陽の両側に同時に現れることもありますが、左右交互に出るのも、初めて見た経験かもしれません。幸運です。でも、願わくは、車を止めて、トランクからカメラを取り出して、そして渾身の一枚を撮ってみたかった!高速道路ゆえ、もちろん止まることも、シートベルトを外すこともできないのです。
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