夕焼け
夏らしい入道雲が、もくもくと立ち上がるようになりました。ざーっと降る雨を連れてきそうな立派な雲ですが、不思議とこの辺りでは、あまり夕立に会うことはありません。その代わり、帰り道の空は、雲が染まります。写真を撮るのが難しい時に限って、撮りたい景色というのは訪れます。帰宅ラッシュの真ん中で、なんとも言えぬ艶やかな色に染まった空を、半分恨めしい気持ちで眺めます。
週末、この小さなうっぷんを晴らすように、空を眺めに出かけました。橋の上に立って、夕焼けを待ちます。「なんとなく、今日は見られそうだ」という勘だけで、この後本当に空が染まるかどうか、いつも確証はありません。太陽が姿を消した直後、雲の色も空の色も薄い灰色のままです。ほんの数分なのか、5分、10分と待ったのかは分かりませんが、しばらくして、燃えるような光が雲に当たり始めました。雲のさらに上の空も、青が深くなり始めました。
いつもこの景色が不思議でなりません。どうして、太陽が沈んだ直後から夕焼けが始まらないのか。どうしていつも色が違うのか。きっと、気象の勉強をみっちりすれば、その理由もわかるのでしょう。つきつめてみたい気持ちもあります。でも、この心を奪われるような空の秘密を、不思議のままにしておきたい気持ちもあります。理屈ではなく、心のままに動いた時の方が、刻まれる深さが少しだけ違うような気がするのです。
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