二重で過剰
山の上の天気は、大抵、街のそれをぎゅっと凝縮したようなものです。家の窓から見える雲の流れが早ければ、山の上では立っているのがやっとな暴風で、街で傘をさしたり閉じたりと不安定な空ならば、山の上では雷が水平に走っているかもしれません。ですから、朝起きてカーテンを開けた時の空模様が怪しければ、その日の野歩きを中止することもよくあります。でも、そんな日にこそ、なんだか、いつもとは違う出会いがありそうな気もしてしまうのです。
この週末の出会いは、帰り道にありました。真っ白な雲の隙間から、姿が見えたり隠れたりする山並みの手前に、低く虹がかかり始めました。淡い七色の端が濃くなっていくのを見て、あそこから虹の橋を渡ることができるだろうか、などと絵本の中の世界を空想します。
その場を離れても、しばらくは左手に虹が見えていましたが、向かう先は峠でしたので、このあとは、真っ白な霧の道中になる予定でした。でも、峠の頂上の少し手前、ところどころ青空がのぞき始めそうだと気付いた時、目の前には、きれいなアーチが描かれていました。先ほどよりも高い空にくっきりと。
今日はずいぶんと当たり日だなどと思いながら、霧雨の中、車を進めていましたが、フロントガラスの曇りのせいなのか、疲れ目の錯覚なのか、どうも虹が何重にも見えているような気がしてなりません。駐車スペースを見つけて、一枚。やはり、二重虹に過剰虹です!疲れ目ではありませんでした。
山でこれだけ気前よく虹が見られたのですから、街でもきっと見られたことでしょう。珍しく出会いの予感が的中し、終わってみれば、穏やかな青空の下を山歩きしたのと変わらないくらい、楽しい一日になりました。
- カテゴリ
- 今週のヒューエンス
- 更新日
- 閲覧数
- 707