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秘境

 こんな場所が残っていることは、もしかしたら奇跡なのかもしれないとも感じます。周囲約1キロの湖には、遊歩道のように整備された道はありません。ごろごろとした石が転がる斜面にかろうじてそれとわかるものが、つまりけもの道と変わらぬ体で、ぐるりと一周めぐっているにすぎません。倒木もあちらこちらで行く手をふさいでいますし、気を抜いたら簡単に水に落ちるんだろうな、と思う所もあります。
 水はどこから見ても澄んでいます。ですが、すぐに深く落ち込んでいるのか、少し先までしか湖底の石を確認することができません。手前の浅瀬では小魚の群れが回遊していて、人の影を感じるとサーッと深い方へと逃げていきますが、またすぐに次の群れがやってきているのが見えます。
 湖を囲む森は豊かで、足元にはエゾオオサクラソウの群落が、奥には樹齢数百年になろうかというような立派な木が何本もありました。倒れた太い木もあり、すでに苔むして樹齢と同じぐらいの年月をそこに横たわっているのだろうかと思わせるものもある一方で、つい1週間前に倒れたばかりのように、生々しく心材をあらわにしているものもあります。そんな若い倒木には、アカゲラなのかクマゲラなのか大きな穴があちこちに開けられて、もう他の生き物たちの命の糧になっています。
 たった1キロを2時間ほどかけて回る間、誰にも会うことはありませんでした。静かに時の流れるこの秘境をまさに独り占めです。この上ない贅沢です。人の手入れが最小限であることに価値を感じてしまう自分に、ある種皮肉を感じつつも、またここで一日のんびりと過ごしたいと、純粋に思うのでした。


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