幸運
実は、毎年のように登っている雌阿寒岳ですが、ここ何年かは天候に恵まれない登山が続いていました。昨年などは、風が強すぎて、砂や小石が顔に飛んでくるような中を歩き、山頂でザックを下ろす余裕すら与えられず、強風から逃げるように下山した記憶があります。そんな日に登らなければよいのにと、当然、自分自身でも思うのですが、何にしても山の天気は変わりやすく、出発時は気持ちの良い晴れが広がっていても、１時間、２時間と歩いている間に、みるみると雲が広がってきてしまうこともよくあります。
この週末も、あまり天気に期待をしていませんでした。週間予報では雨か曇りの予報が続いていましたから、今年も耐久戦になるのかなと思っていたくらいです。当日の朝、起きてカーテンを開けたら真っ青な空が目に入ってきましたが、それでもまだ、期待はしないでおこうと昂ろうとする気持ちを抑えます。１時間ほど歩き、山頂の方向から白い大きな雲の塊が流れてくるのが見えると、やっぱり今年も頂上は真っ白だろうかと思います。
８合目を過ぎる頃、イワツバメがシュッと風切り音を立てながら目の前を横切るようになりました。岩の岸壁で休んだり、飛び立ったりを次々と繰り返しています。思ったより風は強くないなと思いながら、最後のきつい斜面を無心で歩いているうちに、無事頂上に着きました。おぉ～！今年は阿寒湖も雄阿寒岳も見えた～！！火口も青沼も見えた～！！
本州から来たと思われる登山者の会話が聞こえてきました。「やっぱり北海道の山は気持ちいいな～！」「人気があるのが分かりますね～」などなど、大満足の様子です。でも、過去には、私たちと同じ日に、上から下まで真っ白な中で山頂を踏み、「本州からわざわざ来たのに、何も見えない」と、大変がっかりしながら帰った方もいらっしゃいました。この週末の皆さんはとても幸運だったのです。いい思い出に加えてもらえそうな会話があちこちから流れてきて、久しぶりにこちらも嬉しい気分になりました。
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