知る努力
太陽が西へ傾き始める午後2時頃、いつもの場所にいつものオジロワシの姿です。幸い、今日はカメラを持っていました。日高山脈の向こうから冷たい西風が吹いてきて、私の顔はしびれそうですが、オジロワシは鋭い目を見開いて、風の来る方を向いています。
ふと、腰が浮いて「飛び立つ?」と思わせるような格好になり、目線も落ち着かなくなりました。遠くに旋回する猛禽の影が見え、ペアの相手かなと初めは思いましたが、望遠レンズで確認すると影の主はトビでした。続いて真っ白なサギが上空を横切り、カラスも何羽か群れて騒いでいました。なんだか終始、きょろきょろと落ち着かない様子のオジロワシに、私が近くで写真を撮っているせいかなとも思い、早々に立ち去りました。
家に帰って改めてオジロワシについて調べていて、「獰猛な性格ではない」と説明しているサイトを見つけた時にはっとしました。“猛禽類”という名前に強そうな見た目、食物連鎖の頂点という肩書から、勝手に獰猛な生き物だと思い込んでいましたが、そうではなかったのかもしれません。確かに、餌を巡る攻防をオオワシと繰り広げることもありますし、小さなカモたちはその姿を見れば一斉に逃げていきますが、それでも不必要に他の生き物を襲う姿というのは見たことがありません。むしろ、カラスに追いかけられるのをよく見かけますし、狩りをしていない時は木の上でじっとしていることの方が多いくらいです。
誰もが一度は「見た目で判断してはいけない」と言われたことがあるのではないかと思いますが、それは自然に向き合う時にも決して忘れてはいけないことかもしれません。今回のオジロワシの場合とは逆に、小さく可愛らしく見えても安易に手を出すと痛い目をみる生き物も沢山存在します。勝手な思い込みがあるところには、軋轢の種が埋まっている可能性もあります。相手を知る努力は、それが人間でも動物でもやはり怠ってはいけないのでしょう。