整っていく
今年も鳥たちが十勝で羽を休め、英気を養っています。遠くからやってくる編隊に、近くから飛び立つ群れに、どうしてこんなに惹かれるのか、いつも不思議に思います。
どこからともなく鳴き声が聞こえてきたら、それは群れがやってくる前触れです。地平線のあたりから、小さな黒い影が紙吹雪のように舞い上がると、それが一つの意思をもった生き物かのように一筋の列を成し、ほどなくＶの字になり、一度ざわっとくずれても、また同じように列を成し、Ｖの字になり、想像以上のスピードで近づいて来ます。何度も何度も見送っているうちに、何となく、この景色に惹かれる理由がわかってきました。多分、群れが整っていく過程が、混沌から秩序が有機的に生まれる様が、とても心地よいのだと思います。
若い鳥は、長い渡りの途中で体力を消耗して命を落とすこともあるそうです。美しい編隊は飛行中のエネルギーの消耗を減らし、命をつなぐために獲得した美でもあります。そして、一部の研究では、最もエネルギーの消耗の激しいＶの字の先頭に立つ鳥は、群れの中で均等に分担されていて、一羽だけが楽をしたり、一羽だけに負担がかかったりすることがないように統制されているようだとも書かれていました。何百羽もの群れとなればいつもメンバーとは限らないでしょう。どんな仲間とでも同じように海を渡っていける力は、人間の私たちには想像を超えた世界のように思えてきて、また、ほぅと空を見上げてしまうのです。
