フィルター越しの世界
みるみる早くなる日の入りに急かされるように外へ出ると、空は真っ白な雲に覆われていました。日高山脈の方を見やると、西の空から東へ向かって魚の背骨のような面白い雲がダイナミックに迫ってきていたので、写真に一枚撮ってみました。
私が「真っ白」と見た空に、カメラは青空と淡いピンクの雲を見出していました。
もちろん、カメラは機械ですから、設定や装備を変えれば撮る写真をいかようにもすることができます。大抵の場合は、自分が見ている世界の方が美しく感じて、どうしたらそこへ写真を近づけられるかを思案することになるのですが、時折、逆の現象も起こるのです。今回の写真はおそらくレンズに取り付けた偏光フィルターのお陰です。乱反射する光の一部をフィルターが遮ったことで、強い光に隠されていた空の青が現れたのだと思います。
「フィルターを通す」という言葉を比喩的に使うと、あまり良い意味で使われないことの方が多いかもしれません。でも、1枚のフィルターを通しただけで色が現れることもあります。写真は自分の世界を表現する手段という方もいるでしょう。でも、私にとっては、自らの目が捉えている景色が絶対ではないことを、教えてくれる存在でもあるなとも思うのです。