秋の音
2月も下旬、雨水を過ぎた頃にシジュウカラのさえずりが響くようになると、冬も終わるなと感じるようになります。そして、秋の終わり、再びシジュウカラの声が聞こえてくると、今度は、冬が来るなと感じるようになります。夏の間は、沢山の鳥の声にかき消されてしまっているだけなのかもしれません。ムクドリの群れも本州へと旅立った今、また、小さな鳥たちの声が静まった青空に映えるようになりました。
久しぶりにお参りに来た神社の境内には、既に大きな望遠レンズを抱えたカメラマンの姿が複数ありました。奥にはエゾリスの姿がちらほら。夏であれば、太陽から降り注ぐ暑さをじっとしのいでいる時間帯ですが、松の実もクルミも豊富な今は、なりふり構わず餌探しに奔走しているようです。
見つけた餌を隠し場所へ運び込もうとして走り回っている一匹にピントを当てていると、前からカリカリカリ・・・後ろからもキチキチキチ・・・小さな音が絶え間なく聞こえてきます。姿が見えないけれど、走り回っているリス以外にも近くに何匹もいて、餌をかじっているのでしょう。焦点を合わせているリスとの視覚的な距離と、音から感じる見えないリスたちの距離とのギャップに、頭が混乱します。真っ暗な中から聞こえてくるかすかな音の正体が分からず、怯えてしまうのと少し似ています。音の方向へと顔を向けても姿は見えず、また後ろから聞こえてくる音に振り向いてもやはり姿が見えないからです。小さくかすかな音は、思っている以上に人の感覚を刺激するものなのでしょう。他の動物たちのように器用に耳を動かせたとしたら、私の二つの耳は今どちらを向いているのだろうか?なんて想像するとまた楽しくなります。