リンネソウ
高山に咲くこの小さな花はリンネソウと呼ばれます。
花の姿を目にしたことは無くても、名前を聞いて、生き物が好きな方なら、ぴんと来るかもしれません。生物分類学の基礎を拓いたカール・フォン・リンネがこよなく愛し、自らの名をつけたと言われる花です。
野山を歩いていると、見知らぬ花や鳥、昆虫に沢山出会います。そのたびに、足を止め、すかさず写真に撮って後から名前を調べる、というのがすっかり習慣になっていますが、中には写真だけでは種類の判別つかないものも必ずあります。その度に、もっとしっかり本物を見ておけば良かったと後悔してしまいます。
名前を知るということは、そのものを理解する第一歩だと考えていましたが、必ずしもそうとは限らないことに気付きました。写真を撮り、名前を調べて、知ったつもりになって満足していたことが沢山あったのです。でも、淡い香りや、わずかな色や形の変化、周りの生き物たちとのつながり、図鑑にも書いていないことを知るチャンスは、本物と向き合うことができるその場にしか与えられてないのです。
リンネソウは、日本では夫婦花(メオトバナ)と呼ばれていたそうです。そう、良く見てみると、一つの茎から2輪ペアになって花が咲いています。同じように2輪咲く花は他にもありますが、この花がそう呼ばれるようになったのは、厳しい環境の中でも慎ましやかに並んで咲く姿が、夫婦のイメージと重なって見えたからでしょうか。まだ、名前のついていなかった頃、そう呼び始めた昔の人達の豊かな観察力や想像力に、私も見習わなければいけないな、と感じます。
2013年8月12日
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