追っかけ
波の穏やかな入江にぷかぷかと浮いている鳥達の中でも、ひときわ目立つ模様をしているのがシノリガモのオス。顔や首、背中の白い帯と、光によって赤や褐色に浮き上がる美しい羽の模様は、遠くからでもすぐに見つけられます。
シノリガモはレッドリストに名前が載る絶滅の恐れのある希少種ですが、とても好奇心が旺盛なのか、こちらがカメラや双眼鏡を覗いていると、秘かに近づいてきます。もちろん、一定の距離以上近づいてくることはありませんが、人間の様子が気になって仕方がないようで、近づいては少し遠ざかりを繰り返しながら、ずっとこちらの様子を伺っていました。
野生の動物は人間が近づけばすぐさま逃げるものがほとんどです。遠くで休んでいるように見えても、目や耳だけはしっかりとこちらに向けて、警戒をしているものも沢山います。食う食われるの世界では当たり前のことで、特に狩猟の対象となりうるカモたちの、人間に対する警戒は大きいそうです。でも、興味のある相手には興味をもってもらいたいと思ってしまうのも、人間の性。美しい姿を見つければ、追いかけずにはいられません。いつもは逃げられる一方なのに、今日は相手から寄ってきた。ほんのわずか、距離が縮まっただけで、何だか気持ちが通じたような嬉しさを覚え、また、ついつい追いかけてしまうのです。
2014年3月17日
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