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十勝川のカモメ

 カモメといえば海鳥、と思っていました。海から数十キロも離れた内陸で目にしたのは初めてです。
 帯広から車で20分ほどの場所にある十勝川の千代田堰堤は、太平洋へ注ぐ河口から43キロ上流にあります。秋から冬にかけて大きな鮭が沢山遡上し、それを狙ってオオワシやオジロワシなどの大型の猛禽類が集まると聞いて出かけてみたところ、まず目に飛び込んできたのはカモメでした。こんなところにカモメがいるとは思ってもいなかったので、遠目には白鳥かと思ってしまったほどです。
 どうやら、彼らもまた、鮭を狙ってここまでやってきたようです。

 車を降り河原に出てみると、ゆっくりと浅瀬を泳ぐ鮭の背びれがあちこちに見られました。海を回遊し故郷へ戻ってくる道のりは相当なものだったのでしょう。力尽きて、ただ波に揺られているものや、既に骨だけになっているものも沢山打ち上げられていました。自分たちの命を次の世代に受け渡し、また、他の動物たちの貴重な食糧としての役目を終えた姿が、ただそこに横たわっていました。
 突然、カモメたちが一斉に飛び立ちました。夕焼けに染まる空を、大きなオオワシがゆっくりとこちらへ向かってきていたのです。一羽二羽しかいないと思っていたカモメは、実は数十羽も渡ってきていたようです。
 やはり鮭が共に運んできたのでしょうか。辺りには強い磯の香りが漂っていました。海から遠く離れたこの場所で、命が交錯する一時の景色は、静かな夕方に強烈な印象を残しました。

2014年11月17日

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今週のヒューエンス
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