集まった
昨年は時期を逃してしまった『ワシのなる木』。今年はしっかり見ることができました。
日の出の直前、曙色が一番濃くなる時間です。
夜明け前の十勝川の河原へ、実は朝日に染まる白鳥の鳴き交わしを見たいと思い出かけたのですが、まだねぐらから移動してきていないのか、それとも既に暖かい南の方へ渡ってしまったのか、その姿はたった1ペアだけで、辺りは真っ黒なカラスばかりです。その中に、茶色い大きな体が混じっているな、と望遠レンズをのぞきながら観察していると、ふと、対岸の木に沢山のワシがとまっているのが見えました。
「おお〜っ」と、静かな河原に声を響かせてしまい、我ながらあわててしまいましたが、彼らには動じる風もありません。車から人が降りてくるだけで、またたく間に飛び立ってしまうカモなどとは、やはり風格が違います。この日はざっと20羽ほどがとまっていました。肩の羽が白いのは大人のオオワシ。まだ茶色い羽の若鳥が多いようですが、特有の黄色く太い嘴で、トビではないことが遠くからでもよく分かります。
それにしても、何ゆえ、1本の木にこれだけ多くが集まるのでしょう。確かにここは、多くの鮭が遡上してくる絶好の餌場で、ワシたちが集まってくるのは不思議なことではありません。でも、食物連鎖の頂点に立つ彼らが、多くの渡り鳥たちがするように、外敵から身を守るために集団で行動するというのは考えにくいことです。オオワシやオジロワシは成鳥になるまでに6年から8年かかるといいます。若鳥も多く見られるので、もしかしたら家族なのかもしれません。遠くカムチャッカ半島からの千数百キロの旅の末、まず家族の無事を確かめ合い、鋭気を養う場所がこの木だったのかもしれません。いずれも推測の域を超えるものではありませんが、貴重な動物が集まる場所が身近にあるというのも、北海道ならではで、実はとても貴重なことです。
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