雪の妖精
氷の妖精と言えば、流氷とともにオホーツク沿岸へやってくるクリオネが有名です。雪の妖精と言えば・・・、シマエナガという小さな鳥が、そう呼ばれていることを知ったのは最近のことです。
シマエナガはエナガの亜種で、北海道にしか生息していません。ひしゃくの柄のように長い尾羽をもつため体長こそ14センチほどありますが、胴体は小さく、スズメの半分以下の体重しかありません。顔に模様が無いのが本州のエナガとは違う特徴で、小さなくちばしと、正面から見ると白く丸いシルエットが何とも愛らしく、知る人ぞ知るアイドルです。
北海道では1年中生息しているシマエナガですが、葉の生い茂る春から秋にかけては、その小さく動きの速い彼らを探すのはとても困難です。その姿を見つけたのは、空が灰色の曇で覆われた今にも雪が降りそうな朝、広い雪原には生き物の気配がほとんど感じられず、実際の気温よりもずっと寒々しく感じられる空気の中でした。
ジュリリ、と小さな声と共に3羽ほどのシマエナガが降りてきて、水たまりで水浴びをしたり、細い枝の間をしきりに行き来したりし始めました。身体が小さすぎて、望遠レンズをのぞきながらも、その表情までは確認することができませんでしたが、撮った写真を拡大して見た途端、その可愛らしさにすっかり心を奪われてしまいました。
すぐそばにあっても、なかなか見つけられない小さな宝物は沢山あります。大は小を兼ねるなどとも言いますが、小さいものしかもてない力もあります。まだ固く閉じた木の芽から滴る雫を一生懸命飲んでいる姿は、ロウソクにオレンジ色の火が灯ったような、温かな気持ちにさせてくれました。雪の妖精の小さな姿にはそんな力がありました。
2015年02月23日
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